お知らせ
2024.10.07
アスベストはなぜ使われたのか?特性・メリットと歴史的背景
アスベスト(石綿)は、天然に産出する繊維状けい酸塩鉱物の総称です。
その特殊な性質から、かつては「奇跡の鉱物」と呼ばれ、広く使用されていました。しかし、現在では健康被害の観点から使用が禁止されています。
本記事では、アスベストがなぜ使用されるようになったのか、その理由と歴史的背景を紹介します。
アスベストはなぜ使われたのか?その特性とメリット
アスベストとは、繊維状の鉱物で、カナダ・ロシア・南アフリカ・ヨーロッパなど、世界中で広く産出されてきました。
建材や工業製品に広く使われた理由は、その優れた物理的特性にあります。
具体的には、以下7つの特性・メリットがあります。
①耐火性・断熱性
アスベストは非常に高い耐火性を持ち、1000℃以上の高温にも耐えることができます。また、優れた断熱性能も有しており、これらの特性から建築材料として重宝されました。
②防音性
アスベストは音を吸収する特性もあり、吸音材としても利用されました。特に公共施設や商業ビルでは、騒音対策として重要な役割を果たしました。
③耐久性・強度
アスベスト繊維は非常に強靭で、引っ張り強度が高く、摩耗にも強いという特徴があります。この特性により、様々な製品の補強材として使用されました。
④耐薬品性
アスベストは酸やアルカリに対する耐性が高く、化学的に安定しています。この特性により、工業用製品や化学工場での使用も進みました。
⑤電気絶縁性
アスベストは優れた電気絶縁性を持っており、電気製品や配線材料にも広く使用されました。
⑥加工のしやすさ
アスベスト繊維は柔軟性があり、様々な形状に加工しやすいという特徴があります。布状や帯状、糸状など様々な形状に加工できるため、多様な製品に応用されました。セメントと混ぜてスレート材やセメント板などにも使用されました。
⑦コスト面
アスベストは比較的安価で入手できる材料でした。その優れた特性と相まって、コストパフォーマンスの高い材料として重宝されました。
アスベストが使われてきた歴史的背景とは?
アスベストは古代から人類に知られ、その特性を活かして様々な用途に利用されてきました。古代ローマでは「ランプの芯」として、古代エジプトでは「ミイラの包帯」として使われていた形跡があるそうです。
ただ、商業的に本格的に利用されたのは19世紀後半から20世紀にかけてです。特に第二次世界大戦後の建築ブームや工業化の進展に伴い、アスベストの需要は急増しました。この時期、多くの公共建築物や住宅にアスベストが使用され、鉄道、造船、発電所などのインフラにも多く取り入れられました。
アスベストの健康リスクと規制の強化
アスベストの最大の問題点は、その繊維を吸い込んだ際に生じる健康リスクです。
- 肺がん:アスベスト繊維の吸引が直接的な原因となり、肺がんを発症するリスクが増大します。
- 中皮腫:アスベスト吸引によって発生する悪性腫瘍で、特に胸膜や腹膜に影響を与えます。
- アスベスト肺:アスベストの微細な繊維が肺に蓄積し、慢性的な呼吸器疾患を引き起こす症状です。
1960年代後半から、これらのリスクが明確になるにつれ、アスベスト使用に対する国際的な規制が厳格化され、現在ではほとんどの先進国でアスベストの使用が禁止されています。
日本においては2006年9月以降、アスベスト含有製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。(参考:厚生労働省)
まとめ
今回のブログ記事では、アスベストがなぜ使われたのか、その背景とリスクについて解説しました。要点をまとめると、以下の通りです。
- アスベストは耐熱性、絶縁性、耐薬品性、耐久性といった優れた特性から、20世紀を中心に広く使用されてきた
- 特に建築材や工業製品などに利用された
- しかし、アスベスト吸引による深刻な健康リスクが判明し、1970年代以降は各国で規制が強化され、2006年9月以降は全面的に使用等が禁止された
現在では、既存の建物や製品に含まれるアスベストの処理が重要な課題となっています。
アスベスト事前調査をすることなく、建物の解体・修繕などを行うことには大きなリスクが伴い、法令的にも違反となります。今後も、アスベストに対する安全対策は厳しくなる見込みです。
不明点などありましたら、アスベスト対策のプロに相談してみるのがおすすめです。