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2025.02.07
アスベストの定性分析と定量分析の違いと必要性
アスベスト(石綿)の調査では、「定性分析」と「定量分析」という2つの方法が用いられますが、それぞれの目的や特徴は異なります。
定性分析はアスベストの有無を確認する方法であり、定量分析は含有量を測定するために行われます。
今回の記事では、両者の分析方法の違いを紹介し、どのような場面で必要になるのかをアスベスト分析のプロが解説します。ぜひ最後までご覧ください。
アスベスト定性分析と定量分析の違い
アスベストの定性分析と定量分析は、目的や手法、使用される場面も異なります。ここでは、それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
比較表:定性分析と定量分析の違い
| 項目 | 定性分析 | 定量分析 |
|---|---|---|
| 目的 | アスベストの有無を確認 | アスベストの含有量を数値で測定 |
| 主な手法 | 偏光顕微鏡法、位相差顕微鏡法 | X線回折法、電子顕微鏡法 |
| 時間とコスト | 比較的短時間かつ低コスト | 時間がかかりコストも高い |
上記の通り、定性分析は建物の材料や環境試料に「アスベストが存在するかどうか」を迅速に判定するために使用されます。
定量分析は、対象物に含まれるアスベストの「具体的な量」を測定する方法です。アスベストの濃度や重量比が数値で示されます。
アスベスト定性分析の方法と必要性
定性分析は、アスベストが0.1%以上含有されているかを調査するもので、日本工業規格「JIS A 1481群」に基づく分析が行われています。
- 偏光顕微鏡法(JIS A 1481-1):偏光顕微鏡と実体顕微鏡を使用して、アスベストの形態や光学的特性を観察し、その有無を確認します。
- X線回折分析法と位相差分散顕微鏡法(JIS A 1481-2):X線回折装置を用いて、回折ピークを確認します。石綿の種類によって回折ピークのパターンが異なり、その違いから石綿の有無や種類を判定します。最終判断は位相差分散顕微鏡法による有資格者の確認が不可欠です。なお、日本独自の方法です。
定性分析は、建築物の解体・改修前の事前調査や、建材製品のアスベスト含有チェック等で、最初に実施される分析方法です。
定性分析で「含有」と判定された場合、必要に応じて定量分析を行うことが推奨されます。
アスベスト定量分析の方法と必要性
アスベストの定量分析は、アスベストが含まれている試料に対して、その含有率を測定するための手法です。主に以下の方法が用いられます。
- X線回折法(JIS A 1481-3): 最も一般的な定量分析の手法で、試料にX線を照射し、得られた回折パターンを解析することでアスベストの含有量を測定します。アスベストの種類や含有率を正確に特定することが可能です。
- 偏光顕微鏡法(JIS A 1481-4): 偏光顕微鏡や電子顕微鏡を使用して試料を観察し、アスベストの繊維の数や形状を分析します。アスベストの質量分率を推定することができます。
- 質量法(JIS A 1481-5): 試料を化学的に処理し、アスベストの質量を直接測定する方法です。国際的に認められた方法です。
アスベストの含有率が0.1%を超える場合、法的な規制が適用されるため、含有率を把握したいならば、定量分析が必要になります。
定量分析は義務化されていませんが、建材や製品を処分する際に処分業者から求められる場合があります。アスベスト含有建材を適切に処理するため、重要な分析です。
【まとめ】アスベスト分析には定性と定量の2種類がある
今回の記事では、アスベスト分析における「定性分析」と「定量分析」の違いと、それぞれの分析が必要となるケースについて解説しました。
改めて、重要なポイントをまとめます。
- 定性分析はアスベストの有無を調べる分析であり、迅速なスクリーニングに適しています。解体前の事前調査など、初期段階の調査で有用です。
- 定量分析はアスベストの含有量を調べる分析であり、より詳細な情報が必要な場合や法的対応が必要な場合に適しています。リスク評価や廃棄物処理方法の決定などに活用されます。
なお、アスベスト分析は専門的な知識・技術・経験が必要となるため、信頼できる専門業者に依頼することを強くお勧めします。
適切な分析と適切な対応を行うことで、アスベストによる健康被害を未然に防ぎ、法令順守にも繋がります。アスベスト分析についてご質問があれば、お気軽に都分析へお問い合わせください。